「飛ぶ教室」(ケストナー)①

自分を変えていく能力をなくしちゃダメなんだ

「飛ぶ教室」(ケストナー/丘沢静也訳)
 光文社古典新訳文庫

クリスマス休暇が近づく
ギムナジウムでは、
少年たちの創作劇「飛ぶ教室」の
練習が進んでいた。
「飛ぶ教室」は作家志望の
ジョニーが書いた戯曲で、
学校が将来どのように
運営されるかを
描いたものだった。
その最中で事件が起こる…。

「教師には、
 とんでもない義務と責任がある。
 自分を変えていく能力を
 なくしちゃダメなんだ。」

本作品中のこの一言を、
私は座右の銘にしています。

本作品は、ドイツの児童文学者、
エーリッヒ・ケストナーの代表作です。
ドイツ・キルヒベルクにある、
ヨハン・ジギスムント高等中学
(ギムナジウム)を舞台に、
クリスマス直前に起きた
いくつかの事件を、
その寄宿舎住みの生徒が
解決していく物語です。

先ほどの一言は、
物語の大筋には関わりの薄い部分で、
そこだけに登場する
端役の生徒が発する一言です。
しかし、私はこの一言が
とても気に入っています。

どちらかというと、
学校社会は保守的です。
新しいことを嫌います。
PDCAサイクルによって
改善することを
合い言葉にしているのですが、
総じて新しいことは
上からも下からも
つぶされることが多いのです。

原因の一つは、
教育現場が多忙であることです。
新しいことを導入する
=仕事が増える
=多忙化が加速する、
という意識がはたらくのでしょう。
本当はスクラップ&ビルドで、
不要なものを
なくしていけばいいのですが、
それが教育現場では難しいのです。
その結果、改善されないか、
改善が見られても
ver.1.0 から ver.1.1 へ、
下手をすると ver.1.0.1
ぐらいの変化しか
できないことがよくあります。

私は仕事でも私生活でも、
問題を見つけ、それをいかに
改善するかを第一に考えています。
「学ぶ」ことは「変容する」ことと
同義だと考えています。
子どもたちに変わることを望むならば、
教師もまた、それを背中で示すことが
大切なのではないかと思うのです。
私は常に ver.2.0、ver.3.0 へと
進化し続ける、
その気持ちを忘れたくありません。

さて、肝心の本書の中身についてです。
これまでも数多く日本語訳され、
子どもから大人まで
幅広く読まれている作品です。
それは登場する子どもたちの、
生命力に富んだ瑞々しい感性が、
余すところなく
描き尽くされているからなのでしょう。
昔の子どもたちは、
誰に教えられるでもなく、生きる力を
こうして身に付けていたのだと
気付かせてくれる物語です。

政治的なメッセージも含まれていて、
読むたびに
新しい気付きのある作品です。
中学校1年生に薦めたい作品です。

※時代を反映しているためか、
 男の子しか登場しません。
 そのため、現代の女の子が読むと
 違和感を覚えるかも知れません。

(2019.12.21)

CouleurによるPixabayからの画像

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